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ポリマー光変調器を開発し世界最高速の光データ伝送に成功【九州大学】

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データ爆発時代の通信デバイスを低コスト・省エネルギー化

 九州大学先導物質化学研究所の横山士吉教授の研究グループは5月15日、日産化学工業とともに優れた電気光学特性と熱安定性を持つポリマーの開発を、アダマンド並木精密宝石とともに超高速光変調器のモジュール開発を進め、従来技術の無機系光変調器では到達困難な光データ伝送の高速化と低電圧制御に成功したと発表した。
 近年の情報通信量の膨大な増加に伴い、通信機器の高性能化と消費電力の大幅な低減が求められている。また、データセンタ用の大容量伝送技術でもコスト低減が求められている。ポリマー光変調器は、これらの要求に応える新技術として期待されているが、熱安定性などの問題で実用化は困難とされてきた。
 研究グループは、ポリマー光変調器の熱安定化と光伝送の高速化・省電力化を進め、光伝送実験において伝送速度112Gbpsを達成し、かつ動作電圧を1.5ボルトに低減、105℃での熱安定性の実現に成功した。同グループはポリマー光変調器のシリコン光集積技術への応用も目指しており、データセンタやIoTなど新しいネットワーク技術の高速化・省電力化・低コスト化につながることが期待できる。
 同研究は、科学技術振興機構 研究成果展開事業「戦略的イノベーション創出推進プログラム(S-イノベ)」(プログラムオフィサー:宮田清藏氏)における研究開発テーマ「フォトニクスポリマーによる先進情報通信技術の開発」の研究課題「ナノハイブリッド電気光学ポリマーを用いた光インターコネクトデバイス技術の提案」(研究代表機関:宇都宮大学(PM・研究リーダー:杉原興浩教授)、豊田中央研究所(企業代表機関)、参加機関:九州大学、早稲田大学、アダマンド並木精密宝石、日産化学工業ほか、研究期間:平成22年1月~最長10年間)の一環として実施された。
 同成果は、5月15日(火)午前6時(日本時間)に米国で開催のConference on Laser and Electro-Optics (CLEO 2018)で発表された。
 同研究者は「ポリマー光変調器は未来の通信デバイス技術として注目されている。今回の成果によって、これまで解決が困難であった熱安定性に関する課題を克服することができた。今後、通信技術を中心に、自動運転、IoT、人工知能など実用的な情報処理技術に向けたポリマー光通信デバイスの研究を進めていく」とコメントを出している。

電気光学ポリマーを使った超高速光変調器。ポリマー光変調器に入力したレーザー光は、高速の電気信号によって変調され、超高速光信号が伝送される。今回の成果では、1秒間に56ギガビットOOK、または112ギガビットPAM-4の光信号を発生させることに成功した。


本研究で作製した電気光学ポリマー光変調器の写真と光変調特性(上:OOK、下:PAM-4)。光変調器はシンプルなマッハ・ツェンダ型構造を有しており、電極部分に高速の電気信号を入力することで、光信号に変換し光ファイバーによる伝送やボード内の信号処理に応用することが期待できる。