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超高速PLZT光スイッチを採用した波長多重伝送切換装置を開発【NEDO】

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世界初、8K映像データの無瞬断切換で消費電力を1/4に削減

 NEDOのプロジェクトでオーエー研究所とエピフォトニクスは、8K映像データの乱れない切換を実現し、放送局向けのネットワークシステムの消費電力を約1/4に削減可能な波長多重伝送切換装置を開発したと、6月6日に発表した。
 同装置は、高速切換性能と省電力性をもつ超高速PLZT光スイッチを採用したもので、世界で初めて8K非圧縮データに対し、電気変換を伴わず光のままで映像乱れの無い無瞬断切換を実現した。これらの成果を活用して、今後さらにデータセンタ向けネットワークの省電力化を目指すという。

図1:システムに組み込んだDWDM波長多重伝送切換装置

概要

 インターネットや携帯電話等のトラフィックの80%以上がデータセンタ内およびデータセンタ間であり、消費電力増加が大きな問題となっている。2000年から2006年で消費電力は倍増、2020年には2010年比5倍の消費電力増加が予想され、この消費電力増加を解決するのは喫緊の課題となっている。このような背景の中、NEDOは、データセンタに光ネットワーク技術を適用する省電力化に取り組んでいる。データセンタ向けの光ネットワークシステムの事業化の確実性を高めるためには、同システム以外にも光ネットワーク技術を適用し安定稼働の実績を作ることが重要であるため、省電力化を目指した放送局向けネットワークシステムの助成事業にも取り組んできた。今般、このプロジェクトでの最初の研究成果として放送局向けネットワークシステムの省電力化についてオーエー研究所は、エピフォトニクスが開発したナノ秒オーダーの光導波路高速切換性能と、省電力性を有する超高速PLZT光スイッチを光レイヤ1スイッチに採用したDWDM波長多重伝送切換装置を開発した。本装置は、PLZT光スイッチの高速切換性、省電力性の技術を適用したもので、世界で初めて8K非圧縮データに対し電気変換を伴わず光のままの通信で映像乱れの無い無瞬断切換を実現し、既存電気スイッチを採用した無瞬断切換と比較して消費電力を約1/4に削減した。

今回の成果

放送局向けDWDM波長多重伝送切換装置の開発

 従来の8K非圧縮データ伝送機器に採用されているインタフェースであるU-SDIは、複数のマルチモードファイバから構成されたケーブルで、850nm波長の光信号を用い、144Gbpsを超える大容量の映像データを伝送している。U-SDIを構成する複数のマルチモードファイバは、コア内を光信号が全反射して進むモード分散により信号波形が劣化することから長距離伝送に向いておらず、スタジオ機器間等の運用に限られていた。また、映像乱れの無い切換を実現するためには、大容量メモリ、大規模FPGA等を使用する必要があり、さらに、全ファイバの光信号を電気変換し、映像切り換え後、再度、光変換処理が伴うことから、消費電力増大が課題となっていた。今回、これらの課題を解決するために、DWDM波長多重伝送切換装置を開発したという。

消費電力を1/4に削減

図2に示すように、経路切り換えに電気スイッチを用いる従来機器では、光→電気→光の変換を伴うため、数百ワットオーダーの電力を消費します。今回の開発において、光のまま経路切り換え可能なPLZT光スイッチ自体の消費電力は、0.001ワットオーダーだ。さらに、データ中のブランキング領域を監視するためにのみ光→電気に変換し、PLZT光スイッチ制御を行なった。この結果、消費電力を既存電気スイッチとの比較で約1/4に削減した。

図2:消費電力削減効果

映像無瞬断切換に成功

同開発では、図3に示す8K非圧縮映像データ中、映像切り換えポイントとして割り当てられているブランキング領域(約6マイクロ秒)を検出、PLZT光スイッチを制御し、波長多重された光信号のまま一括で経路切り換えを行う手法を確立した。

図3:映像データイメージ

 図4に示すようにPLZT光スイッチ自体の切換時間は、約4ナノ秒内に収まっている。この高速切換性能により映像乱れが発生しないブランキング期間内での経路切り換えを成功させることができた(特許出願済)。
これは、従来のMEMS等の切り換え時間がミリ秒オーダーの光スイッチでは実現でき無かった。

図4:PLZT光スイッチ切換時間(10.692Gbps変調光使用)と観測ポイント
-切換ポイントをデジタルオシロスコープで測定した結果-

今後の予定

 NEDOは「今回の成果をもとに、データセンタ向けのシステムに展開、さらなる研究開発を推し進め、2023年に省エネ効果量2.6万㎘、2030年には21.2万㎘を目指す(原油換算)。また、この装置を組み込んだシステムをデータセンタ内のToR間接続に適用することで、切換速度が遅い従来の光スイッチと比較して、トラフィック当たりの消費電力を1/10以下への削減を目指す」としている。