シリコンCMOS集積回路を用いて300GHz帯単一チャンネルの伝送速度が毎秒105ギガビットのテラヘルツ送信機の開発に成功
DX/IoT/AI 無料広島大学、NICT、パナソニックは共同で、シリコンCMOS集積回路により、300GHz帯単一チャネルで毎秒105ギガビットという、光ファイバに匹敵する性能のテラヘルツ送信機の開発に世界で初めて成功したことを2月6日に発表した。
開発の背景
テラヘルツ帯は、これからの高速無線通信への利用が期待されている新しい周波数資源。研究グループは、290GHz〜315GHzの周波数帯域を用いて毎秒105ギガビットの通信速度を実現する送信器を開発した。この周波数範囲は、国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)の世界無線通信会議(WRC)2019で議論される予定の275GHzから450GHzの周波数範囲に含まれている。
開発のポイント
昨年、300GHz帯で直交振幅変調(QAM)を用いることにより、CMOS無線送信器の通信速度が大幅に向上することを実証した。今回の研究成果は、チャネルあたりの通信速度を昨年の6倍にする技術を開発したことで、世界で初めて1チャネルあたり毎秒100ギガビットを超える送信速度を達成したものだ。毎秒100ギガビットは、現在のスマートフォンと比較して100~1000倍高速で、DVD1枚分の情報を約0.5秒で伝送できる速度となる。これを情報通信機器等で広く用いられているシリコンCMOS集積回路で実現したことにより、将来的に安価に電器製品等に搭載して普及できる可能性が高くなった。
今後の展開
今回の研究成果により、テラヘルツ帯の高速無線通信が、情報通信ネットワークなどのインフラに使用される光ファイバに匹敵する毎秒テラビットの通信能力に近づいたことが示された。光ファイバは、遠く離れた通信衛星とのリンクを実現できないが、テラヘルツ無線なら、通信衛星への超高速リンクも可能だ。これにより、例えば、飛行機のWi-Fi接続を大幅にスピードアップできるようになる。
また、情報サーバから携帯端末へのコンテンツ高速ダウンロードやモバイルネットワークの基地局間通信等にテラヘルツ無線を用いることが期待できる。
さらに、テラヘルツ無線の新しい可能性の1つは、高速で遅延の小さな通信技術の提供だ。ガラス製の光ファイバを伝搬する光の速度は大気中よりも遅くなる。そのため、リアルタイム応答を必要とするアプリケーションに光ファイバは向いていない。テラヘルツ無線は、大気中を光と同じ速度で伝わるため、リアルタイム応答を必要とするアプリケーションでの利用も期待される。