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富士通とKDDI、5Gにおける仮想化基地局の実現に向けた実証実験を実施

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将来的なネットワークスライシング技術の研究に活用

 富士通は5月20日、5Gで活用が期待されている、ソフトウェアにより仮想化した基地局(以下、仮想化基地局)の実現に向けた課題の明確化、およびその解決策の検討を目的として、KDDIと共同で3月17日から実証実験を開始し、5G向け仮想化基地局のシステム性能要件を検証していることを発表した。
 富士通は「本実証実験を通じて、より柔軟で高性能な5G向けの仮想化基地局および関連製品の提供や、将来的なネットワークスライシング技術の実現に向け取り組んでいく」としている。

 5G通信は、スマートフォンなどの携帯電話だけでなくスマート工場や遠隔医療、自動運転などさまざまな分野での活用が想定されており、分野毎に通信要件が異なる。そこで、それらの要件ごとにネットワークを仮想的に分割し、適切な電波を提供するネットワークスライシング技術によって、限られた電波帯域の有効活用を可能にし、各分野における通信機器が必要十分な帯域でスムーズに通信できるようになることが期待されている。
 また、そのためには、5Gの電波を発信する基地局について、異なる要件ごとに専用のハードウェアを用いて構築するのではなく、汎用的なサーバ上にソフトウェアによる仮想化基地局を実装し、柔軟なネットワーク構成を実現する技術の必要性が高まっている。

5G向け仮想化基地局のイメージ図

実証実験の概要

 従来の4G LTE通信に対応した仮想化基地局を構築し、その動作を詳細に分析することで5Gにおいて予想される共通の課題を洗い出し、かつ5G特有の課題も類推することで、5G向けソフトウェア基地局の開発における課題の明確化、およびその解決策を検討する。また、専用のハードウェアではなく汎用的なサーバ上に仮想基地局を実装することで、より柔軟なソフトウェア基地局を想定した検証を行う。

検証内容
 汎用サーバ上に構築した検証用のソフトウェアの動作を分析し、システム性能を評価する。これにより、仮想化基地局を柔軟かつ高性能で動作させるためのサーバやソフトウェアなどの最適な構成、および必要な設定を洗い出し、仮想化基地局開発における課題の明確化、およびその解決策を検討する。また、分析結果をもとに、5G向け仮想化基地局のシステム性能要件を類推する。
 実証実験日は3月17日から5月29日まで。各社の役割は次の通り。

富士通:4G LTE向けの仮想化基地局およびコアネットワークの構築、性能可視化ソフトウェアの開発・提供、5G向け仮想化基地局の性能要件の類推、要件仕様の作成

KDDI:検証環境およびネットワーク機器の提供、検証環境の構築、検証プランの立案、検証用データの準備、5G向け仮想化基地局の要件検討

今後について

 富士通は「当社は、今回の実証実験で得た知見やノウハウを生かし、より柔軟で高性能な5G向け仮想化基地局やその特性を生かしたソリューション・サービスの開発を進めていく。また、将来的なネットワークスライシングの実現に向け取り組んでいく」としている。