CiniaとFar North Digitalが北極圏の海底ケーブル新設プロジェクトに署名。アジアのゲートウェイは北海道
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Ciniaは12月23日(ヘルシンキ)、北極圏の海底ケーブル新設プロジェクトで、アラスカのFar North Digitalが署名したと発表した。
サービスのレディ目標は2025年末。プロジェクトのコスト見積もりは約10億ユーロ(11.5億米ドル)。プロジェクトの主要なEPC(Engineering,Procurement, Construction)パートナーはAlcatel Submarine Networks。
計画されているケーブルシステムは、日本から北西航路を経由してヨーロッパに到達し、アラスカとカナダ北極に上陸する。ヨーロッパ上陸はノルウェー、フィンランド、アイルランドで計画されている。
14,000キロメートルのケーブルシステムにより、アジアとヨーロッパ間の光距離が大幅に短縮され、信号の遅延が最小限に抑えられる。
CiniaのCEOであるAri-Jussi Knaapila氏は「新しい多様なルートとの安全で高速な国際接続に対する需要が高まっている。アジア、ヨーロッパ、北米に跨る世界最大のインターネットを取り入れるFar North Digitalは、真のグローバルベンチャーになる」とコメントを出している。
さらに、Far North Digitalのカナダの関連会社であるTrue North Global Networksは、先住民コミュニティや地方自治体と協力して、北極圏のカナダに多数の支社を設立することに取り組んでいる。ローカルに所有されているコミュニティベースのデジタルネットワークを、グローバルインターネットに直接接続することで、未だ高速ブロードバンド設備の行き届いていない地域にもバックボーンを確立できる。
Far North DigitalのCTOであるGuy Houser氏は「このケーブルシステムは、国家間の電気通信のセキュリティを高速化および改善するだけではなく、デジタル・ディバイド解消の架け橋となる。経済発展、ヘルスケアへのアクセス改善、教育オプションの強化を通じて、北部のコミュニティに持続可能な自己決定のより良い機会を提供する。さらに、気候変動の研究を行うための比類のない能力をサイエンスに提供するプラットフォームとして機能する」とコメントを出している。
アジアでのケーブルシステムの主要なゲートウェイは日本
内閣特別顧問である慶應大学の村井純教授は「日本にとって国際的な繋がりの多様性は不可欠であるため、日本と北欧が北極圏で繋がることは、長年における日本とCiniaの共通の目標だった。岸田首相は、新しい陸揚げポイントを建設する計画を含む新しいデジタルビジョンを発表した。北海道が北方や東方への玄関口になるという私の長期計画が、現実のものになりつつある。Far North Fiberのイニシアチブに参加できることを、とても楽しみにしている」とコメントを出している。
編集部私見
Cinia は2019年7月、ロシアのモバイル事業者MegaFoneと、史上初の北極横断通信リンク建設に向けた国際コンソーシアム設立に関する覚書を交わした。しかし、両社が締結した北極圏の“ヨーロッパとアジアを結ぶ”海底ケーブル新設プロジェクト「Arctic Connect」は、2021年5月に凍結。
フィンランド側はこのプロジェクト凍結には賛同していなかったと見られており、今回はロシア無しで、北米企業であるFar North Digitalとの“ヨーロッパとアジアと北米を結ぶ”プロジェクトの署名に至る。
一部海外メディアでは、「Arctic Connect」凍結の一因として、日本との交渉難航があったのではないかと推測している。これは、日本を周回する海底ケーブル「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」を打ち出した岸田内閣の発足以前の話となる。岸田内閣時代は、以前よりも通信インフラ整備に関する国際連携のビジョンが明確になったと期待したい。
(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)