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TSMCが、AnsysおよびMicrosoftと協力し、シリコンフォトニック コンポーネントのシミュレーションと解析を10倍以上高速化

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 AnsysとTSMCは9月24日(ペンシルベニア州ピッツバーグ)、シリコンフォトニック コンポーネントのシミュレーションと解析を大幅に高速化するマイクロソフトとのパイロット試験を成功させたことを発表した。(本抄訳は、9月27日に日本法人より提供)

 両社は「Azure AIインフラストラクチャ上で動作するNVIDIAアクセラレーテッド コンピューティングを搭載したMicrosoft Azure NC A100v4シリーズ仮想マシンを介して、Ansys Lumerical FDTDフォトニクスシミュレーションを10倍以上高速化することに成功した。PIC は、データ通信、生物医学ツール、車載LiDARシステム、人工知能など、さまざまな業界のアプリケーションに不可欠だ」と説明している。

 シリコンPICは、ハイパースケール データセンタやIoTアプリケーションに不可欠だ。フォトニック回路と電子回路を組み合わせることは、正確なマルチフィジックス設計と製造を必要とする骨の折れる作業となる。些細なミスがチップの継続性を損ない、数ヶ月に及ぶコストとスケジュールの後退を招く可能性がある。
こうした課題を軽減し、シリコンPICの超帯域幅能力を引き出すために、TSMCはAnsysと協力し、NVIDIA GPUを使用する非常に効率的なAzure仮想マシンを使用して、Lumerical FDTDシミュレーションを高速化した。Azure NC A100v4 VMがシミュレーションを実行し、コストとパフォーマンスのバランスをとる最適なリソースを特定した。
全体的な結果として、クラウド環境におけるシームレスなデプロイメント、グラフィカル インターフェイス アクセス、分散シミュレーションのスケーリング、大規模データセットのポスト処理が可能になる。
 両社は「一貫したエンド・ツー・エンドのデジタル エンジニアリング ワークフローを実現するために、Azure Virtual Desktopはデスクトップと同じユーザ エクスペリエンスを提供することで、シームレスなクラウドへの移行を実現した」と説明している。

 TSMCのHead of Silicon Photonics System DesignであるStefan Rusu氏は「当社のマルチ フィジックス シリコン ソリューションのサイズと複雑さによって、可能なすべてのパラメータの組み合わせをシミュレーションすることは困難だ。今回の協業は、Ansysが最新のクラウドインフラと技術を効果的に活用し、パワフルで予測精度の高いソリューションを短時間で提供できることを改めて示すものだ」とコメントを出している。

 Lumerical FDTDをクラウド上に展開することで、設計者は、フォトニック回路と電子回路の組み合わせに関連するマルチ フィジックスの課題を考慮した最適なチップ設計を迅速に特定することができる。

Microsoft Azure上の様々なGPUモデルにおける、Ansys Lumerical FDTDによるマイクロLEDシミュレーションの高速化パフォーマンス。

 AnsysのVice President and General Manager of the Semiconductor, Electronics, and Optics Business UnitであるJohn Lee氏は「Ansysは、最先端のフォトニクス向けマルチ フィジックス シミュレーション エンジンと密接に連携できる独自の機能を開発した。TSMCおよびMicrosoftとの協業により、現在最も重要なチップ設計課題の1つである高速光データ転送に対応する技術が加速された」とコメントを出している。

 MicrosoftのCVP of Azure Infrastructure, Digital and App InnovationであるShelly Blackburn氏は、AnsysとTSMCとの継続的な協業関係のメリットについて「HPCとAIの統合パワーを求めるユーザにとって、オンプレミスで慣れ親しんだ経験を維持しながら、クラウドソリューションの柔軟性を利用できる私たちの協業は大きな利点だ。私たちは協業することで、高品質な半導体製品に不可欠な大規模設計の複雑さに対処することをめざしている。Microsoft Azureのクラウドコンピューティングのパワーとスケーラビリティを活用することは、こうした課題を克服するための重要な戦略だ」と強調している。

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